母の訃報を母の友人たちに知らせたい、と「突撃お宅訪問」を決行!
母が亡くなった年の暮れ、遺品整理をしていた時に、荷物の中に母宛の年賀状の束を見つけました。
毎年個人的にやりとりをしていた、母の友人らしき人たちからの年賀状です。
それを見ていて、「そういえば、母が亡くなったことをこの送り主達はみんな知らないんだな……」
と、ふと気になってしまったのですね。
母は再婚相手の暴力から逃れるために、亡くなる数か月前から身を隠す生活を余儀なくされていました。
そして、裁判と調停を経て離婚が成立し、そのわずか4日後に突然倒れてこの世を去ったのです。
でも、この母の死を知る人はほんとうにごくごくわずかでした。
新聞のお悔やみ欄には、すでに離婚していたため(再婚時の姓ではない)旧姓で載っていましたし、
連絡しようにも、母の友人知人など私が知るはずもなく
また、当時は「母の荷物はすべて再婚相手の手の元にある」という悪条件でしたから……。
こうして毎年、年賀状を交わすとしたら、よほど親しい間柄に違いありません。
でも、今回突然母からの年賀状が途絶えたら、きっと不思議に思われてしまうでしょうね。
何とかしてこの人たちに、母の訃報を伝えられないものだろうか?
とは思ったものの、私の知人ではないのに、私から喪中葉書を出すのもちょっと変な感じです。
かといって、面識のない私が電話したとしても、どう切り出していいのかすら分かりません。
――そうして考えた末、直接訪ねてしまおう!ということになりました(笑)
その方々から頂いた年賀状を手に持っていれば、べつだん不審にも思われないんじゃないかと。
カーナビのルートが違っていた?進路はどんどんおかしな方向へ
訪問には、車にカーナビを搭載している友人が付き添ってくれました。
そして、一軒目の訪問先に向かっていた時のことです。
「うーん、この辺りなんだけどなあ……」
住所から行くとそんなに難しくない場所なのですが、どうしてもその家が見つかりません。
「じゃあ、ナビで見てみようか」
私達は、ナビの案内に従ってルートを進み始めました。
ところが、ナビはどんどんとんでもない方向を示し始めています。
「――ねえ、これってもしかして山道、だよね?」
「何か、目的地からどんどん離れて行ってる気がしない?」
私たちは、住宅地を抜け ひたすら山を上ってくねくねと廻り、挙句
「こ……これって、道なの?まさか途中で行き止まりなんてことには……」
と不安になるほどの道なき道、いわゆるけもの道をガタゴトと走っていきました。
この後、予想もしなかった「まさかの展開」が!
もうこうなると完全に、ナビを信じた私たちがバカだったと後悔するハメに。
道なき道を戻ることも出来ず、ただひたすらナビの示す方向へと走り続けるのみでした。
そして、住所からは確かこの辺り……という場所から40~50分ほどかけて、
ひと山をぐるりと回り、ルートに従って山道を降りかけた、その時です。
私たちの目の前に、山を切り開いて作った墓地がパーッと広がったではありませんか。
「え~~~~~~~っ!!!」
一瞬、私は自分の目を疑いました。
――なんと、そこは「母が眠っている霊園」だったのです!!
ひと山越えて、はるか別の街に眠る母の前に、まさか私たちは呼ばれたというのでしょうか?
「――ごめん、ちょっと寄っていっていいかな」
私は、車を降りてそのまま霊園の中に行き、母の墓前に手を合わせました。
母は、私が母の知人を訪ねて行くことを とても喜んでいるんじゃないだろうか……
そんな思いに駆られながら車に乗り込み、再び走り出したのです。
やがて、ナビの示す場所へと到着した私たちは、もはや完全に言葉を失ってしまいました。
辿り着いたその目的地は、私たちがナビを頼りに進み始めた場所から目と鼻の先、
そう……あの地点から、たった2ブロック手前の交差点だったのです!
つまりは、母に呼ばれた「とんでもドライブ」な出来事だった?
スタート地点からも見渡せるほどすぐそばだったという、その目的地に対して
私たちは 確かに反対の進行方向を向いてナビをつけはしましたが……
まさか、それが延々と山を越え、坂を下って
母のお墓参りをすることになろうとは、予想だにしませんでした。
「これ、完っ全に、仕組まれたよね……」
何とも疲れた、とはいえ苦笑いを隠せない、とんだドライブとなったこの一件。
まあ、これで母が喜んでくれたのだとしたら、私たちも行った甲斐があったというものです……(笑)
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